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お箏のこと
日本の伝統的な楽器お箏は、日本人なら誰もが知っている楽器です。しかし、お箏の世界にいると当たり前に思っていたことが、邦楽に触れる機会のない方にお話すると、意外とびっくりされることに気づきました。
そんな『お箏のこと』あれこれ書いてみました。お箏について興味ある方、習い始めたばかりの方も、是非ご覧ください。
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令和5年11月12日
第65回仙台三曲協会定期演奏会
コンマスはいるの?
これは、定期演奏会を聴きにいらした方からの質問でした。
『六段の調べ』を演奏した時に、大勢で演奏するにもかかわらず、指揮者無しで「よっ」のかけ声で演奏が始まったことに驚いたそうです。
質問に対する答えは、洋楽でいうところのコンマスという立場に近い人はいます。その人の合図や呼吸を感じて演奏を開始します。今回は、舞台に上がっている人数が多く、コンマス的立場の人の気配(合図)が見えない人が多いので「よっ」のかけ声で演奏を開始しました。
邦楽の中にどっぷり浸かっているので、それが当たり前ですが、そのような感想をもらい、「あ、そういうところが邦楽のおもしろさなんだな」と改めて気づかされました。
箏は何面準備をするの?
私たちは、演奏会に出る際、曲数分の箏を準備します。
例えば、演奏会で自分が3曲弾くとすれば、箏3面を自宅から持って行きます。箏を使い回すこともありますが、基本的には舞台で演奏をする場合は、1曲に対して箏1面です。箏の特性なのですが、曲ごとに調絃が異なるため、このように箏を準備するのです。(調絃については、また別の機会に触れたいと思います。)当たり前のことですが、ピアノは、舞台に置いてある1台を使い、何曲も弾きますよね。箏は、それができないのです(^^;)
大きな演奏会になれば、出演者数かける曲数分の箏が舞台袖や楽屋通路にずらーっと並びます。ちなみに、並んでいる箏の姿は、皆さんが普段見ている(想像している)演奏中の横になっている状態ではなく立ち姿です♪
私は箏が出番待ちをしているこの光景がとても好きなのです♪
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
箏って大きくて持ち運びが大変そう
一般的に「お箏」と呼んでいるものは、絃が13本あり、長さが6尺(182cm程)幅が27cm程あります。大きくて持ち運びが大変そうに見えますよね。
しかし、実は箏柱(箏の絃を支える柱のこと。”ことじ”と読みます)を外すと、少し厚みはありますが板状になるので、持ち運びは意外と簡単です。重さも平均で6~7kg程度で、 長さから受ける印象ほど重いものではありません。運ぶ際は、箏柱を外し、油単やカバーに入れて車に積み込みます。
17絃のお話その1
私は箏の他に17絃も弾きます。
17絃は「縁の下の力持ち」でもありますが、曲の流れをコントロールする力もあり、重要な役割を果たします。古典曲では使われませんが、現代曲ではよく登場します。洋楽でいうところの、ベース担当の役割が多いです。曲によっては、17絃のソロの部分があったり、主役になる場面もありますが。
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箏は糸が13本、17絃はその名のとおり糸が17本です。糸も太く、17絃の全長は2メートルあります。とにかく長くて重いので、演奏会のとき、17絃の担当になった者同士、「17絃は合奏練習のために移動するのが大変だよね、重いよね、腰が痛いよね、腕が辛いよね…」などど、労りの声を掛け合います。でも、箏とはまた違った低音で、あたたかみのある音が魅力で、結局、17絃パートを引き受けてしまうのです♫
演奏会で17絃の音を聴く機会があれば、「大変なんだなぁ。でもいい音だなぁ」など感じてもらえると嬉しいです。